YARDな風景 vol.2
「CAFE MONKEY BAR」
ここにしかないカレーがある。

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築約90年の三軒長屋にある“うまいカレー”

「YARDな風景vol1」で紹介された宇治園の南側。道路を挟んで向かいの三軒長屋にある「CAFE MONKEY BAR」は、知る人ぞ知る薬膳カレーの名店で、最近は雑誌やテレビに取り上げられることも増えてきました。

筆者もこれまで何度となくランチに足を運んでいましたが、話を聞くのは今回が初めて。すると「もともとはカレー屋じゃなかった」という意外な歴史を教えてくれました。

シカゴの料理人から苗穂のカフェオーナーへ

「CAFE MONKEY BAR」がオープンしたのは今から11年前の2008年12月。マスターの石丸尚文さんは、その1か月前までアメリカ・シカゴで和食の料理人をしていたといいます。

「私は戻ってくる気がなかったんですけど」と苦笑する石丸さん。帰国は現地で知り合ったアメリカ人の奥様の強い希望で、「里帰りの度に日本の文化とふれていた妻が、日本に興味を持ち、住みたいという話になったんです」。

そうして日本に戻ることが決まった石丸さんは、「どうせなら新しいことをしたい」と料理人から自営業の道を選択。不動産会社に紹介された苗穂の長屋を気に入り、最初に始めたのは「コーヒーとチーズケーキしかないカフェだった」と振り返ります。

苦節3年。試行錯誤の末に生まれたカレー

カフェなら簡単にできそうと始めたものの、さすがにコーヒーとチーズケーキだけでは売上が立たなかったそうで、「タコライスを出したり、3年ほどいろいろな料理をつくって試行錯誤した中、最も人気を博したのがスープカレーだったんです」。

「CAFÉ MONKEY BAR」のスープカレーは、どこかの店の味をルーツに持つわけでも、何かに影響されたものでもありません。石丸さんがこだわったのは、添加物や化学調味料を一切使わず、素材の味を生かすということ。そして、とにかく身体にいいものを入れたいということ。

イチから勉強したというスパイスには、ウコンや甘草、陳皮といった漢方薬に使われるさまざまな生薬が配合されていて、そんなスープカレーだからこそ、お腹の空いた日だけでなく、前日に飲みすぎたり、食欲がないという日のランチにも、ふと思い出して食べたくなってしまいます。

豚足がまるごと1本入った世界初の新作も

一番人気はポパイカレー。裏ごししたほうれん草が入ったまろやかな味わいのカレーで、具材はとんとろ、手ごねハンバーグ、チキンのいずれかを選べます。ほかにも自家製ベーコンのカレーもファンが多く、青森県・十三湖のしじみや広島県産のかきが入ったカレーなど、ほかではあまり食べられない組み合わせがあるのもこの店の魅力です。

中でも最新作という豚足カレーは、3時間煮込んだトロトロの豚足が1本まるごと入った異色なメニュー。奇妙な組み合わせに感じますが、ゼラチン質のぷるぷるとした食感とスパーシーなカレーの味わいが意外にもよく合い、これまでに味わったことのない世界を堪能できます。

また、カフェ時代からあるコーヒーは創業時から変わらず、イタリア製のエスプレッソマシンで一杯ずつ抽出。看板にある通りの“濃いコーヒー”で、深煎りのコクと香りがカレーを食べた後にもよく合います。

地元の人たちが集う夜にも足を運びたい

ランチタイムは薬膳カレーの専門店ですが、夜になるとバーに変身。お酒はもちろん、生地もソースもベーコンも手づくりのピザや、手打ち麺のパスタなど、カレーだけではないこだわりのフードがたくさんあります。

「昼は近隣で働くサラリーマン、夜には苗穂に暮らす地元の人たちに多く利用してもらっています。ここにお店を出すまで苗穂はまったく知らない場所でしたが、カレーを食べに来たり、飲みに来ていろいろな話をしてくれる地域の人たちとふれあう中で、私自身もカフェオーナーとして育ててもらった気がしています」。

苗穂でランチをするなら、苗穂でちょっと飲むのなら、

うまいカレー、濃いコーヒーの看板がある古民家へ。

石丸さんに会いに行ってみませんか?

 

(文と写真)
児玉源太郎
プランナー&コピーライター。「cafe monkey bar」は日頃のランチに欠かせない存在であり、「うまいカレー、濃いコーヒー」という秀逸なコピーの手書き看板と長屋の景観は、この地区に残していきたいランドマークの一つだとも思っています。

https://www.facebook.com/gentaro.kodama.3