常に札幌に寄り添ってきた
「苗穂駅」という健気な存在

2019.04.26

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地図を見るとき、まず「駅」を探してしまう。

鉄道の駅は、街の顔であり、歴史の語り部でもあります。札幌、いや、北海道の顔として、常に時代を象徴してきた札幌駅からひと駅、歩いても行ける距離にあるのが「苗穂駅」。明治43年の開業以来、この駅は、札幌を支える産業のまちとして栄えてきた苗穂エリアを見守り続けてきました。

大日本麦酒札幌工場(現在のサッポロビール)などの工場専用線として札幌の大きな原動力となった明治・大正期。北海道庁と苗穂駅が一直線で結ばれた、現在の北3条通りを市電が走り、沿線を活気づけた大正・昭和期。鉄道関連施設によって南北に分断されながらも、苗穂エリアは、常に札幌の時代とともに歩み続けてきました。

▲昭和36年 北3条通りを走る市電(北3条東8丁目)<札幌市公文書館蔵>

その変遷を戦前の昭和10年から83年もの間見守り続けてきた2代目の旧木造駅舎が年内に解体される予定です。

「お疲れさま、ありがとう」

もし間に合えば、その健気でノスタルジックな佇まいに、労いのひとことを伝えにいってみるのもいいかもしれません。

▲昭和の頃の2代目苗穂駅<札幌市公文書館蔵>

住民たちの情熱が実現させた、三代目「苗穂駅」

三代目の新苗穂駅は旧苗穂駅から約300m、札幌駅寄りに移転建設されました(2018年11月開業)。

▲2018年11月17日 記念式典が開催された。

線路で分断された南北をつなぐ自由通路が設けられた「橋上駅舎」は、周辺住民の悲願でした。将来的には、空中歩廊で北口にあるアリオ札幌とも直結する予定なのだそうです。

▲自由通路の渡り初めのシーン。

新しい苗穂駅の魅力は、なんといっても線路上の自由通路からの眺め。東側には、鉄道マニアでなくとも興奮してしまう、苗穂駅構内の引き込み線や普段目にしたことのない車両がジオラマのように広がります。

▲改札を抜けると東側の引込み線などが一望できる。

▲自由通路から西側を眺めると札幌駅都心の風景が広がる。

対して西側の札幌駅方面には、JRタワーを中心とした都心の風景。特に夕景・夜景は素晴らしく、走行列車のテールランプが感動的です。

南口には再開発の一環として、駅直結の高層マンション(ダイワハウス/25階と27階のツインタワー)も建設予定。下層階には商業施設が入る予定です。大きく変わりゆく苗穂の、新たなランドマークとして住民たちの期待も膨らんでいるそう。

▲苗穂駅南口。駅舎は赤レンガをモチーフにデザインされた。

新時代の語り部として、苗穂エリアの発展・成長を末長く見守り続けてほしいですね。

「よろしく、三代目」

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