YARDな風景vol.21
まわりの景色は変われども…
北三条通の守護神「岩佐ビル」

2021.03.26

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今から70年前かつてここはラムネ工場だった。元勤務先の3番目の写真スタジオとして、ここ岩佐ビルに入居して十数年。現在は私のスタジオとしてそのままお世話になっている。

この建物は、2010年「札幌景観資産」に指定されている。私が来た時は、すでにレトロかっちょいいビルとして、さまざまなクリエーターたちが多く集まるビルだった。

歩道から内部の駐車場へ続くこのトンネルが結構好きなポイント。車で侵入するときは、人や自転車に要注意だ。

中から外へ。古いビルゆえに入れるトラックのサイズも限られている。昔のラムネを積んで行き来したトラックは小さかったのだろう。このトンネルは深夜0時から朝5時まで門が閉められる。

トンネルを抜けると中庭駐車場へ。右のスロープ奥は2・3Fが駐車場。岩佐ビルは4つの棟から成り、口の字型をしている。古いけれど、さすが元工場。大きな地震の際にも、1Fのうちのスタジオは何一つ落下することなく無事だった。

徹夜明けの風物詩。日の出前のわずかな時間、青く染まるビルが好きだ。もはやどっちが本宅か分からぬほど泊まり込む時も…。

ビル内は大小、多様な間取りの部屋がたくさんあるが、共通しているのは3〜4mの天井の高さ。コンパクトな部屋でも圧迫感がないのは良いところ。天井の梁もレトロな感じだ。

北3条通りに面した窓からは、かつてのサッポロビール工場のレンガの建物が見える。同じ豊平川の伏流水を利用して、あちらは麦酒、こちらはラムネを製造していたそうだ。当時の賑わいを覗けたらどんなに良いだろうか。

岩佐ビル1階路面には、おしゃれなショップが並んでいる。「Sweet Lady Jane」さんは、アーリーアメリカンを思わせるポップな外観が目を引くスイーツ店。

店内も可愛らしい。通りを眺めながらケーキを頬張ることもできる。

季節によりカラフルなフルーツを使ったケーキもおいしく大人気なのだが、実は美しいウェディングケーキやデコレーションケーキも素晴らしい。

おしゃれな洋服屋もビルの景観に一役買っている。「Brownfloor clothing」さんは、Made in SAPPOROオリジナルブランドの『ナチュラルバイシクル』を展開するアウトドア系のセレクトショップ。

メンズのカジュアルな服や雑貨がぎっしりと…これは女性が見ても楽しめます。

桜の開花よりも先に春を告げてくれるのは、ビルエントランス名物の年代物の君子蘭たち。毎年この元気な色を見ると、ああやっと冬が終わったんだな…と思う。

我がスタジオ内部を公開。元の勤務先からそのまま引き継いだ。ここは、ラムネの広い倉庫だったスペースを壁で区切って、幾つかの部屋にしたそう。白い撮影スペースは4m弱の高さ。ここでモデルや商品、美術作品など、たくさんの撮影をしてきた私にとって一番神聖な場所である。

かつてはどういう使い方だったのか?奥に小部屋が作りつけてあったりして、ここは特に凸凹で不思議な間取り。右の入口付近も梁以外は4m弱ある。グレー一色が寒々しくて、入居時にカラフルに塗りました(笑)。青いドアは、5年前まで暗室を作って使用していたけど、今は小道具置き場に。

小部屋の上、ロフト部分には工場時代に使用していた古い配管が残っていて、スチームパンクな趣も気に入っている。

この不思議に入り組んだ梁には、よく見ると当時の人のメモ書きが残っていて面白い。とにかく元工場だけあって、天井の高さは申し分無し。自宅よりも圧倒的に長い時間ここで過ごしているので、こっちが家みたいなものだ。

北海道庁・赤レンガ庁舎へと続く北三条通。ここは、かつて「開拓使通」と呼ばれた。右手前が岩佐ビル、左がサッポロファクトリーという好立地。

現在、週末の夜の通りは少し寂しい。夏祭りの時期には、この通りを北海道神宮の山車が通る。岩佐ビルの前に止まるので、お囃子が聞こえてくるとカメラを持って入り口で待機する。今年の夏も見られるといいな。

 

(文と写真)

伊藤留美子
フォトグラファー。年中北海道内を走り回って公私ともに写真漬けの日々。2016年、屋号リトミコフォトグラフィーとして独立。前職の写真事務所より岩佐ビルのスタジオを引き継ぐ。