YARDな風景vol.14
旧永山邸庭園で感じる札幌の四季

SHARE

北海道庁赤レンガ庁舎から東に向かって伸びる北3条通りは、「開拓使通り」、「札幌通り」と呼ばれていました。創成川を超えた通りの先に、明治時代から存在している札幌市の文化財、旧永山邸があります。

旧永山邸は正式には「札幌市旧永山武四郎邸及び札幌市旧三菱鉱業寮」という名称で、旧永山武四郎邸は北海道指定有形文化財、旧三菱鉱業寮は国登録有形文化財として大切に保存されている文化財です。これら二棟の建物には明治、昭和の建築様式の名残が見られ、北海道開拓使時代の洋風建築として、また、昭和初期のクラブハウスの特徴が遺る建物として貴重な歴史的建造物です。また、札幌のまちなかにありながら、現在も庭園と一体で保存されているという点でも特殊な存在と言えるでしょう。

旧永山邸の南側にある縁側からは、緑豊かな庭園を見渡すことができます。庭園にはイチイ、ツツジ、ホウノキ、フジ、サクラ、カエデ、モミジ、ハルニレなど多様な樹種が見られ、春はサクラの花びらで敷き詰められたピンクの芝生が、夏には隣接する永山記念公園の樹木と合わせてみどり豊かな景色が広がります。

樹齢150年を超えると見られるハルニレ、クロマツも現役で、旧永山邸が建てられた明治初期から同じ場所にあったのでは、と言われています。

ちょっと見つけにくいかもしれませんが、エゾカンゾウ、ボケ、梨の木、栗の木も植えられています。庭園を散策しながら探してみてください。

故郷から移植した樹木を望郷樹、と言うそうです。旧永山邸の家主であった永山武四郎氏は、鹿児島生まれの人。建物と一緒に残っている庭園には、彼が故郷で見ていた樹木も植えられているのかもしれません。

明治時代から令和の時代にその姿を存在させている旧永山邸は、穏やかで力強く、庭園の中はいつも時間が止まっているような静けさを感じます。

かつて家主も眺めていた景色には何が映っていたか、旧永山邸の縁側から眺めてみませんか。

文・写真/行天フキコ(ギョウテン フキコ)
札幌市出身。大学卒業後、塾講師、カフェ店員、コールセンタースタッフを経て、
現在は、まちづくりコンサル会社(株)ノーザンクロスに所属。
札幌市の文化財・旧永山邸指定管理業務を担当し、「文化・歴史・地域」という
多様な考え方が存在するテーマを軸に、多様な背景を持つ方々と意見を紡ぎ合わせて
日々過ごしています。

SPOT