YARDな風景 vol.5
北海道教育大学アーツ&スポーツ文化複合施設
「 Hue Universal Gallery」
進化を続ける、札幌軟石の蔵

NOTE
NO.13
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札幌軟石を使った、教育大学の文化複合施設

札幌駅や大通駅からも徒歩圏内というアクセス抜群な立地に、一際目を引く蔵が佇む。その外観から「何だろう?」と来館する人も多いというこの施設、実は2015年3月にオープンした「北海道教育大学 アーツ&スポーツ文化複合施設 Hue Universal Gallery」通称HUG(ハグ)なんです。館内には大きさの違う3つのギャラリーがあり、年間を通して展覧会やコンサート、スポーツ系の講座などが開催されています。

私がHUGを知ったのは、昨年のこと。久しぶりに母校である教育大学のHPを覗き、HUGのアイコンを発見したことがきっかけでした。調べてみてびっくり、札幌軟石を使った、とっても素敵な施設が卒業後にできていたのです。それからというもの、教育大の施設ということで親近感を抱いてきたHUG。詳しくお話を聞けるのを楽しみにしながら、取材当日を迎えました。

芸術の世界への入口には、印象的な扉絵が

岩見沢校(美術)の卒業生でHUGスタッフの泉菜月さん

遠くからでも目を引く扉絵は実は2代目なんだそう。ドアは備え付けのため、以前の絵を塗りつぶした後に、岩見沢校の美術の先生お二人によって公開制作されたものでした。

HUGのスタッフさんは、岩見沢校(美術)の卒業生と大学院生のお二人。当日は、卒業生である泉菜月さんにお話をお伺いしました。

 

昭和初期の軟石や木材を利用して、「蔵」を再現

HUGは、【教育大学の活動を知ってもらう】【学生に研究成果を発表する場を提供し、成長を応援する】【外部利用に開かれた施設として、市や社会に貢献する】という大きく3つの目的を持った施設です。

元は八百屋問屋の貯蔵庫だった《写真提供:北海道教育大学》

札幌軟石を用いたこの建造物は、元々は昭和初期に八百屋問屋の貯蔵庫として建てられたものです。地域のランドマーク的存在として、飲食店などに形を変えて残ってきたものの、一度は更地に。その後、土地のオーナーがもう一度「蔵」を再建したいと考えます。時を同じくして、HUGのような文化施設をつくろうと土地を探していた教育大学と理念が一致、再建が決定します。併設するマンションの建設に伴い、当時の石材を使用して外観・内部共に蔵を再現した現在のHUGが完成したのは2014年のことでした。

建物の特徴は、何と言っても昭和初期の貴重な軟石や木材を使用した施設であること。そして、軟石が生み出す空間の雰囲気にあります。当時の軟石は手作業で削られていることから、表面の模様に違いがあり、館内でも数種類確認できるそう。また、軟石の効果か夏でも館内は涼しく快適なんだとか。

さらに、再建時にはコンクリートで躯体を作り直して建てられているため、文化施設として重要な防音環境もばっちり。声の反響も良く、演劇公演などにも適しているとか。1階には窓がないため、入口からの光を隠せば簡単に暗闇を作ることができ、スポットライトも効果的に使用できるという文化施設としてのHUGの特徴も教えてもらいました。

 

軟石を用いた他にはないギャラリー。展示には一工夫

当日は札幌校「図画工作・美術教育分野」の3・4年生による「文月展」が開催中でした。

一般的なギャラリーの壁の色は白が多い中、HUGでは札幌軟石を使っていることで壁の材質も色も異なり、同じ作品でも見え方が全然違ってくるんだとか。「作品が弱いと、印象が軟石に持っていかれるので、この雰囲気にのまれない作品制作や展示が大切です」と泉さん。そのため、学生には特に、展示の工夫の仕方をアドバイスすることも。「スタッフは二人とも自分でも展示活動をするので、備品の使い方だけではなく、アイデア段階から相談に乗ったり、アドバイスもしています。他のギャラリーよりも対応できることが多いのは強みだと思っています」と心強いお言葉も。

在廊していた3年生、岩泉さんと小出さんにもお話しをお聞きできました。大きい作品でも1~2カ月で仕上げると聞き、びっくり。文月展は3・4年生の合同展示のため、先輩との貴重な交流の機会でもあり、在廊中には来館者から話しかけられる機会も多く、普段はなかなか聞くことのない一般の方からの感想を聞けるいい機会になっているようです。

HUGかわいい化計画で親しみやすく開かれた施設へ

館内の随所で見つける手書きのPOP。実は、ほとんど泉さんが描いています。「HUGかわいい化計画」として泉さんが個人的に始めた活動なんだそう。そこには、「軟石のごつごつした感じが、人によっては、少し冷たい印象が感じるのではないかと思ったんです。何をしている施設か外観からはわかりにくいので、外にも行灯看板に手書きの施設紹介を飾ったり、人のいる温かさを出すことで、もっと気軽に入りやすく、遊びに来やすい空間にしたい」という思いがあるそう。

学生だけではなく、活動している人みんなを応援したい

設立当初は学内での利用に限られていたHUGですが、学外利用もできるようになり、より市や社会貢献につながる施設としての役割を大切にしています。学生だけではなく、展示やコンサートなどの活動をしている人を応援したいという気持ちから、学生が関係している・していないに限らず、来館や郵送で届いたフライヤーはラックにまとめて掲示しています。「それぞれのイベントに足を運ぶ人が少しでも増えればいいなと思いますし、HUGがそういった情報発信の場になりたいです」と泉さん。実際にフライヤーをちょくちょく確認しに来てくれる常連さんもいるとか。身近に情報が手に入る場所があるって素敵ですよね。

入口横、岩見沢校の学生が制作した通称「ミニHUGちゃん(募金箱)」もかわいいと好評。

取材も終わり、帰り際に目に入ったこちら、岩見沢校の学生が制作した通称「ミニHUGちゃん(募金箱)」もかわいいと好評なんだそう。

今回の取材を通して私が強く感じたのは、HUGが教育の場であり、社会に開かれた施設であるからこそのあたたかさでした。それは、「蔵」から教育大学の文化施設になっていく過程の中で少しずつスタッフの方たちによって造られていったものだと思います。

今年もグランドピアノの常設やワークショップの参加費設定や物品販売が可能になるなど、より使う方の希望に寄り添いを続けるHUG。イベント開催を検討している方はぜひお気軽にお問合せをしてみてください。やさしいスタッフお二人がどうやったら実現できるかから一緒に相談にのってくれますよ。

また、「さっぽろ創世スクエア」や「札幌市民ギャラリー」との展覧会のハシゴもおすすめ。展示期間以外も、館内では岩見沢校の図録やスタッフの作品、大学案内の閲覧が可能なので、お近くに寄った際はふらっと中を覗いてみてはいかがでしょうか。

◯次回展示は、札幌国際情報高校美術部OGOBによるグループ展「KJB」。2019/8/12~8/24(火曜定休)に開催。

(文と写真)
コピーライター
梅津 遥 (うめつ はるか)
富山県出身、お芝居と漫画とお酒を愛するコピーライター。大学院進学のため北海道札幌市へやって来たのが2011年のこと。今年の9月からは武者修行のため東京へ行くことが決まっている中で札幌最後の取材がHUGだったこと、何だか感慨深い今日このごろです。札幌での出会いや思い出を大切に。成長して戻ってくるその日まで、いってきます!

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