ネバーネバーカリーの魔力に魅せられて

yard_17_1
南2条西5丁目にあった前店舗の外観。2019年3月閉店直前に撮影した

カンクーンが南2条西5丁目にオープンしたのは2004年。当時、僕はその近くの広告制作会社で働いていた。カンクーンの2階には「スタンレー」というアジアンレストランがあり、そっちの方はよく通っていたが、当初のカンクーンの印象は薄く、「普通のスープカレー」と思っていた。

僕が頻繁に通うようになったのは、独立して事務所を大通エリアに移した2012年以降のことだと思う。きっかけは覚えていないが、はっきり言えるのは「ネバーネバーカリー」に出会ったからだ。ネバーネバーの由来は、納豆、オクラ、長いも、温泉卵のネバネバ食材のミックス。スープカレーとしては「本筋」ではないメニューだが、ネバネバが醸す味わいと切れ味のあるスパイス感に魅了され、週イチペースで通うようになった。

yard_17_2
筆者のイチオシ!納豆・オクラ・長いものネバーネバーカリー920円(税別)

カンクーンには同僚と行くことが多く、彼女は辛さ14番を選び、僕は4番を選ぶ。いつしか「ネバーネバー4番と14番ですね…」と、店のスタッフからオーダーする前に聞かれるようになった。ネバーネバーの魔力に取り憑かれた僕らは、「マンネリ上等!」と飽きることなく食べ続けた。

しかし、やがて別れの日がやって来る。2019年3月、ビルが老朽化で取り壊しとなり立ち退きを余儀なくされて閉店。その数ヶ月前から閉店の告知がされ、「大通エリアで店を開いて〜」と熱望していたが、適当な物件が見つからず、カンクーンは約15年の歴史を閉じた。ほどなくして、僕らはカンクーンロスに陥った。ほかの店に行っても満足できる味に出会うことなく、スープカレーを食べる頻度が激減した。

あの味を再び、イーストエリアで

yard_17_3
現在の店舗の内観。前店舗の手づくり装飾が引き継がれている

2019年9月、Facebookに流れてきた情報を見て歓喜した。カンクーンが創成川イーストエリアに移転オープンしたという報だ。僕らはすかさず新しい店に行ってみた。前の店より少し広く、店内はゆったりしている。厨房のスタッフも変わらず笑顔で迎えてくれた。そして、オーダーしたのはやはりネバーネバーカリー。半年ぶりの再会だったが、変わらず旨い!事務所から遠くなってしまったので週イチで通うのは難しいが、それでも月イチペースで通っている。

yard_17_4
お店のイチバン人気!チキン&ベジタブル1,000円(税別)

今回、オーナーの佐藤大輔さんに話を伺った。佐藤さんは、もともと前の店舗の2階にあったスタンレーの社員で、「スープカレーの店でもやるか」と会社の事業としてカンクーンを立ち上げた。さまざまなスープカレー店を回って味を研究し、試行錯誤を重ねてカンクーンの味は完成した。「僕はもともと和食の料理人で、和のエッセンスを入れたかったんですね。スープは昆布、椎茸、カツオ出汁、醤油を加え、10種類以上のスパイスを使って味を仕上げています」。なるほど、これまで何度も食べてきたけど、和のテイストが入っているとは気づかなかった!和の味わいが主張しすぎることなく、味に深みをもたらしている。これが、なんとも言えない旨さの秘訣なのだ。

yard_17_5
(右)佐藤さんと(左)開業以来のスタッフの高橋なつきさん

「以前、この店はラーメン屋だったんですね。実は、僕はこの店の近くに住んでいて、空き店舗を探していた頃、ラーメン屋の店主に『物件を譲ってよ』と聞くと『いいよ』と言ってくれて。それで再開することができました」と佐藤さん。まさか、営業中の店に物件交渉するとは(笑)。

「僕は15年以上この辺りに住んでいますが、徒歩でサツエキにも大通にもすすきのにも行けて、豊平川にも近い。騒がしくなく、治安もいい環境が気に入っています。頓宮などでイベントを開いたりして、イーストエリアを盛り上げていきたいですね」。カンクーンのカレーは、ネバーネバーに限らず、ほんといい味してますから。テイクアウトもやっているので、ぜひぜひ一度ご来店してくださーい!

yard_17_6
SOUPCURRY&SPICE CANCUN

住所:札幌市中央区南2条東6丁目5番地
電話番号:011-261-7099
営業時間:ランチ11:30〜16:00(15:30L.O.)・ディナー18:00〜21:00(20:30L.O.)
定休日:不定休あり
URL:http://us-market.co.jp/cancun/